WikiLeaksと機密情報と需要と供給
2009年12月27日から30日にかけて、ウィキリークスがドイツ・ベルリンのBCC国際会議場で『26c3』というカンファレンスを行った時のプレゼンテーション動画の文字起こし(part3)です。
ジュリアン・アサンジとダニエル・シュミットの考えるウィキリークスのあり方
WikiLeaks Release 1.0 日本語字幕付き (3/7)
ジュリアン・アサンジ:この書類には、ジュネーブ条約が禁じている内乱制圧の際の敵軍戦闘服の着用を、アメリカの政府は特殊部隊には許可していると書かれています。
国際法違反です。
それなのに、誰も文句を言わない。
何故でしょう?
単純な効率の問題です。200ページを越える書類など、誰も読む時間がない。軍事用語を表す頭字語がいくつか使われているので、辞書で調べる手間もかかる。内容を理解するための負担が大きすぎるんです。
WikiLeaksリンク先:(Category:US Department of Defense - WikiLeaks)
侵略された国の諜報部がこの書類を利用することはあっても、一般の政治論には登場しない。
ジャーナリストが情報をニュース化しない理由
そこで僕たちは考えました。どうしたらジャーナリストにその気になってもらい、読む時間を作ってあげられるのか?
実験したことがあります。チャベス大統領の元スタッフが書いた7,000通近いEメールを入手したときです。膨大な情報量です。
大量の情報を公開すると、誰も記事にしないことは前から分かっていました。経験ある記者は読む時間がない。
そこで関心の度合いを計るために独占権をオークションにかけました。だけど、無理だったんです。手続きが難しすぎて、入札価格を決める前に、一部分を見たがる人がいたり、その間、他の誰にも見せるなとか、難しすぎました。
もっと自然に独占権を決める方法があるように思うんです。
つまり、ジャーナリストや報道組織やブロガーが、情報の提供にそもそも関与している場合は、一定期間その人に独占権を与える、ということです。それが彼らに時間を与えます。
情報が公開される以前は、独占状態だからすごく価値があるが、公開されれば、供給は無尽蔵。したがって、公開された情報の商品価値はゼロになります。誰もがそれを利用できるので、ジャーナリストは儲からない。結果として誰も儲かりません。奇妙なことですけどね。
ジャーナリストへの情報の需要と供給の促進策
そこで僕たちが作ろうとしているシステムは、情報提供のシンジケート化です。人権擁護団体のウェブサイトやメディア組織が、ウィキリークスを使った情報提供を要請する。
あとは、僕たちが保護管轄権をクリアしたり、メタデータを消去したり、公表に伴う法的リスクを取ります。こうすることで提供される情報は1,000倍にもなります。
同時に、二次的報道の質も飛躍的に向上します。公表した情報が政治的な影響を持たないとしたら失敗です。検索エンジンにもいくらかの政治的影響力はあります。
僕たちのヒットの40%は検索エンジンからのものです。
ただ、それは一般の政治論に加わらないので、他の人が考えていることについての意見を変えるに至りません。
ダニエル・シュミット:もう少し詳しく言うと、情報提供者は、特定のジャーナリストや新聞に対して、調査の為の期間を指定します。
指定期間が過ぎれば、ウィキリークスが公表することには変わりがなく、これは重要なポイントです。全ての情報は省略なしに公表されるんです。
僕たちは、ただその効果を最大にしようとしているだけです。誰かが情報を手にして、実際に記事にしてくれるように。
もしも指名されたジャーナリストがそれについて書かないとしたら、そのこと自体がニュースでしょう。何故書かないのか、ということがね。
そして、彼らがそもそも正確な報道をしているのかどうかが疑問になります。将来的にニュースがもっと面白くなるメカニズムだと思います。
また、この情報提供システムは、政府や企業内の内部告発者にも使える形に出来ると思います。
現状では、僕たちのシステム以外には、そういうものはありません。政府や企業内の透明性を高めるのを助けたいんです。
内部従事者がこのメカニズムを利用して、企業や政府などの不祥事の情報を送れるように。
情報の需要と供給は難しい問題ですが、僕たちは、新聞と読者の繋がりを強めたいと思っているんです。読者が、自分の持っている情報がその記事に役立つと感じたら、実際にそうする気になり、新聞の報道をより分かりやすくするための手軽な方法があるように。地方や独立系のメディアには特に有効だと思います。
自分たちでは法的に戦えない人も助かりますし、僕らが持っているインフラで様々な支援が可能です。これが、僕たちが準備中の大きなシステムの一つです。
話題があっちこっち飛ぶのは気がついていますが、色んなことが起きていて、どれも重要で、選ぶのが難しいんです。
でも、どうしてもお話ししたいことがあります。
アイスランド最大級のカウプシング銀行の貸付記録を公開!
このカンファレンスには一番ふさわしいトピックだと思います。未開の領域に足を踏み入れているからです。アイスランドの人たちと共に、あることを試みようとしています。
11月の末にアイスランドで会議がありました。知らない人もいるかもしれませんが、アイスランド最大級の銀行の貸付記入帳を公表しました。
ジュリアン・アサンジ:8月31日のことです。
ダニエル・シュミット:ええ。銀行が倒産する直前に、誰が預金を引き出したかを暴露したんです。
アイスランドの国民30万人全員にとっての一大事です。小さなミクロ経済では、誰もがその影響を受けますから。
この貸付記入帳を見れば、誰でも銀行が破綻する前に国外に金を持ち出したのが誰だか分かります。この事実を見れば分かるんです。
この国を略奪し、何世代も先まで負債を負わせたのが誰なのか?
ジュリアン・アサンジ:貸付記入帳にある記録は約7,000億円分です。僕たちが公表した2日後、アイスランドの国営放送局が夜のニュースで取り上げましたが、放送の5分前に禁止令がくだり、アイスランドの放送史上初めて報道が出来なかったので、彼らは「この内容はお伝えできませんし、他にはニュースがないので、内容を読めるサイトを数分間お見せします」と言いました。
WikiLeaksリンク先:(Kaupthing leak exposes loans - WikiLeaks)
ダニエル・シュミット:僕たちは、会うたびにアイディアが浮かぶんです。周りを観察するうちに。あるとき、ジュリアンがすごいアイディアを思いつきました。オフショア・フィナンシャル・センターについて。
僕は、それまでそういうふうに考えたことはなかったけど、すごく興味深いんです。
オフショア・フィナンシャル・センターは基本的に、小さな島にあります。資源が限られているので、主要な産業で競争することが出来ないところです。観光客は呼べるかもしれないが、たいした収入にもなりません。
そこで、彼らは特別な法律のパッケージを提供します。この法律パッケージは、お金や資産を隠したり、会社を登記するのに有利なわけです。
そして、世界を搾取している人たちの隠れ場所になっています。
こそこそと行動し、僕たちを告訴するような人たちのね。
(続く)
「国際法違反です。それなのに誰も文句を言わない。何故でしょう?」こう問われたら、日本の皆さんはどう答えるでしょうか?
日本国内において、ここ最近の重要政治問題に関して、耳にしたことのある「国際法」というその中身。日本の権力側にすり寄る人たちのロジックでは、都合良く使われています。厳密に精査していくと、アメリカが「国際法」を無視しているケースはイラク戦争のみならず、それ以前の戦争でも多く指摘されているところです。
そして、国内に目を向けると、憲法問題に関して「国際法」という言葉を使いながら、改憲を目論む権力側を補完する形で有識者が口にするのを耳にします。前にも述べましたが、日本人が国際情勢に疎いことを利用した悪辣な手口に見えます。その内容をよく見てみると、有識者が口にする「国際法」は前段部分をわざとネグり、一部分だけを都合良く抜き出していることが分かります。
また、有識者のみならず、日本のマスメディアの報道でも、よく「国際的」「グローバル」「世界は」「国際社会」など使われますが、その中身が何を指しているのかというと、大概は「アメリカ」「西側」あるいは「アメリカの軍関係」「アメリカ国務省」か「アメリカ国防総省」なのです。
ジュリアン・アサンジが指す国際法とは、明確に「戦時国際法」を指しています。
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